浮華ふか)” の例文
それでもう少し浮華ふかを去って摯実しじつにつかなければ、自分の腹の中はいつまでったって安心はできないという事に気がつき出したのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またソクラテスの言ったことや為したことが、当時の淫蕩いんとう浮華ふかなる風俗の進歩をさえぎったから、彼は青年を毒するものなりと呼ばれて死刑に処せられたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ブラームスという人は、おそろしく正直な人であった。あらゆる浮華ふかなもの、派手なもの、軽薄なものは、ブラームスの作品にも生活にも介在することを許さなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ただ願うらくはかの如来にょらい大慈だいじ大悲だいひ我が小願の中において大神力を現じ給い妄言もうげん綺語きご淤泥おでいして光明顕色けんじき浄瑠璃じょうるりとなし、浮華ふかの中より清浄しょうじょう青蓮華しょうれんげを開かしめ給わんことを。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ここには誇張も嫉妬しっともない代りに、浮華ふかに対する嫌悪けんおがあまり強く働らき過ぎた。だから結果はやはり誤解と同じ事に帰着した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)