浮腫ふしゅ)” の例文
きのうの脈搏みゃくはく不整からきょうの結滞。浮腫ふしゅ、チアノーゼ。力弱く数の少い呼吸が見てるうちにときどきとまる。看護婦さんが軽く胸をたたく。と、息を吹きかえす。
母の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
そこには、浮腫ふしゅでもあるのかねむたそうな目をした、五十がらみのずんぐりとした男が立っている。丁抹デンマークの、クロムボルグ紀念文化大学の教授ケルミッシュといった。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
氏郷に毒を飼ったのは三成のざんに本づくと、蒲生家の者は記しているが、氏郷は下血を患ったと同じ人が記し、面は黄に黒く、項頸うなじかたわら、肉少く、目の下すこ浮腫ふしゅ
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そしていて、浮腫ふしゅのようにぶくぶくしていず、遒勁しゅうけいともうべき響だということである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
造化は今のたいの弱みに乗じたるものならんか、いわゆる富士山頂の特有とも称すべき、浮腫ふしゅおかされ、全身次第にふくれて殆んど別人を見るが如き形相となりたり、この浮腫ふしゅということは
ソノセイカドウカ脚ガ非常ニ重ク且浮腫むくンデイル。浮腫ふしゅハ脛ヨリモ足ノ甲ガ一層甚ダシク、趾ノ根モトニ近イ辺ヲ指デ押シテ見ルト、恐ロシイホド深ク凹ム。ソシテイツマデモ凹ミガ戻ラナイ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかも、奇妙に脂ぎっていて、死戦時の浮腫ふしゅのせいでもあろうか、いつも見るように棘々とげとげしい圭角けいかく的な相貌が、死顔ではよほど緩和されているように思われた。ほとんど、表情を失っている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)