浩嘆こうたん)” の例文
「アア、美味うまかった……」と、久助は箸と丼を蕎麦屋へ返すと、天にむかって浩嘆こうたんした。市十郎は、丼の底に余した汁を、お燕の口に与えていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまで来れば大丈夫。モウ一足で目指す薩摩の国境という処まで来ていたが、そこで思いもかけぬ福岡の健児社の少年連が無法にも投獄拷問されているという事実を風聞すると天を仰いで浩嘆こうたんした。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
駒井が浩嘆こうたんすると白雲が
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宋江は、宸筆しんぴつを見て、ああ……と浩嘆こうたんしてやまなかったが、明ければ十四日、この黄昏たそがれをはずしてはと、まつりの人波にまぎれて、城内の中心街へ入りこんでみた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とは、古典にみえる浩嘆こうたんであるが——この炎をうしろに、叡山東坂本へと落ち行った鳳輦みこし供奉ぐぶの人々にしても、それぞれの感や反省のいたみに、足も心もそぞろであったに違いあるまい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武松は何度となくいって、人の世の流転邂逅るてんかいこうの奇に浩嘆こうたんを発するのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、義貞は浩嘆こうたんして。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)