浅黄裏あさぎうら)” の例文
切る積りかも知れないよ。俺にはそんな気がしてならねえ、——お茶屋へ始めて来たような浅黄裏あさぎうらが、女中に一分の祝儀は出来すぎているぜ。ね、番頭さん
遊冶郎ゆうやろうがかッたるそうに帰って来る吉原組よしわらぐみの駕もあれば、昼狐につままれにゆく、勤番の浅黄裏あさぎうらもぼつぼつ通る。午後の陽ざしに、馬糞ばふんほこりが黄色く立つ。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勿論、主人持ちの小僧や、年寄りの巾着きんちゃくなぞは狙わない。彼女が狙ったのは、浅黄裏あさぎうらの、権柄けんぺいなくせにきょろきょろまなこの勤番侍や、乙に気取った町人のふところだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
旧制度の中で忠実に、粗衣粗食そいそしょくしている武士というものの力である。江戸へ出れば勤番者だの、浅黄裏あさぎうらだのと、野暮の代名詞にされている人々の支えだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御守殿お茂与というのは一時深川の岡場所で鳴らしたしたたか者で、大名の留守居や、浅黄裏あさぎうらの工面の良いのを悩ませ一枚ずりにまでうたわれた名代の女だったのです。
「それからグイと野暮やぼに作った。本場の浅黄裏あさぎうらこしらえで編笠茶屋のあたりをウロウロして居ると、来たね」
ひとを罵るのにもよく“浅黄裏あさぎうら”だの“勤番者きんばんもの”だのと云うくせがある。要するに、それは彼が、彼自身を洗練された都会人としている誇りからくるものだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五十前後の鬼が霍乱かくらんを患ったような悪相の武家、眼も鼻も口も大きい上に、渋紙色の皮膚、山のような両肩、身扮みなりも、腰の物も、代表型ティピカル浅黄裏あさぎうらのくせに、声だけは妙に物優しく
「ちッ。……二本差の浅黄裏あさぎうらだよ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんな気のきかない浅黄裏あさぎうらじゃない、品川では暖簾のれんの古い酒屋ですぜ」
「まず、お国侍、五十前後の浅黄裏あさぎうらかな」