流露りゅうろ)” の例文
悲しみ、ほほえみ、喜び、憂い、その場その場により、その時その時に従って、無限の表情が流露りゅうろして尽くるところがありません。
無表情の表情 (新字新仮名) / 上村松園(著)
酒は好きだがそう強くはない性質らしく、男はあかい顔に何となく感情を流露りゅうろさす声になった。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
御製は、調べ高くしてうるおいがあり、豊かにしてたるまざる、万物を同化包摂ほうせつしたもう親愛の御心の流露りゅうろであって、「いねにけらしも」の一句はまさに古今無上の結句だとおもうのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
巧く描こうとばかりして、真の流露りゅうろというものが現せない。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渋渓しぶたにの埼の荒磯ありそに寄する波いやしくしくにいにしへ思ほゆ」(巻十七・三九八六)というのであるが、この「たまくしげ」の歌は、ごうも息を張ることなく、ただ感を流露りゅうろせしめたという趣の歌である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)