洪水みず)” の例文
手を放すなといって滝太郎が水を含んで吐いた時、お雪は洪水みずの上に乗上って、乗着いて、滝太郎に頬摺したが
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うんと持って来たんじゃないか。この暴風雨あらしは、きっと半年分も降ると思ったから。——それに暴風雨がやんでも、この洪水みずはなかなか退かないにきまってるもの
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ面白そうにしている私に気がつくと、母は私を寝間に連れていって、「心配しないでおいで。この位の洪水みずはいつもの事なんだからね」そう繰り返し繰り返し云って私をなだめながら
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
是れだから昔も今も同じ雨量あめで、洪水みずは三倍の害をする
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
……それがあの洪水みずの時に流れ出して、大丈夫だった広岡のうち衝突ぶつかったので流れただろう、誰のおかげだ……
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それがね、姉さん、みんな金子かねのせいですとさ。洪水みずが出て、うちが流れた時、もとあった財産も家もみんななくなってしまってね、仕方が無い時にその養子を貰ったんだッて。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
根太ねだゆるんだはお互様じゃが、わしとこなど、随分と基礎どだいも固し、屋根もどっしりなり、ちょいとや、そっとじゃ、流れるのじゃなかったに、その時さの、もう洪水みずが引き際というに
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
洪水みずだ、しっかりしろ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)