洞庭湖どうていこ)” の例文
い景色だと云ってい処もある。同じ湖水でも、洞庭湖どうていこは駄目だ。冬って見たからかも知れないが、ばかりあって一向湖水らしくない
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
汪は事情があって湖南へいって、夜、洞庭湖どうていこに舟がかりした。その時はちょうど満月の夜で月が東の方にのぼって、澄んで静かな湖の面は練ったようになっていた。
汪士秀 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
洞庭湖どうていこ杜詩とし琵琶行びわこうの文句や赤壁せきへきの一節など、長いこと想い出すおりもなかった耳ざわりのいい漢文のことばがおのずから朗々ろうろうたるひびきをもっくちびるにのぼって来る。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
二十八年始皇帝が洞庭湖どうていこをお渡りの折、暴風のために、一時この玉璽も、湖底に沈んだことなどもありましたが、ふしぎにもこの玉璽を持つ者は、一身つつがなく栄え、玉璽もいつか世に現れて
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朗吟して、飛過ひか洞庭湖どうていこ
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
洞庭湖どうていこの中には時とすると水神があらわれて、舟を借りて遊ぶことがあった。それは空船あきぶねでもあるとともづながみるみるうちにひとりでに解けて、飄然ひょうぜんとして遊びにゆくのであった。
織成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)