洋袴づぼん)” の例文
「あの太陽の色を御覧なさい。」博士は夫人の言葉も耳にらぬらしく、水夫ふなのりのやうに両手を洋袴づぼんの隠しに突込みながら言つた。
かれえりしろかつたごとく、かれ洋袴づぼんすそ奇麗きれいかへされてゐたごとく、其下そのしたからえるかれ靴足袋くつたび模樣入もやういりのカシミヤであつたごとく、かれあたま華奢きやしや世間せけんきであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今度は両手を洋袴づぼんの隠しに突込むでみた。隠しには何一つ無かつたので、はつとなつたが、よく考へてみると初めから何一つ入れてはなかつたのだ。
「私はタゴオルの外套を見た。左のポケツトには『詩』が入つてり、右のポケツトには『哲学』があつた。財布は——財布は確か洋袴づぼんの隠しにあつたやうに思ふ。」