河内平かわちだいら)” の例文
そこは峠の道を横に入った崖の中腹で、甲賀の山、河内平かわちだいら、晴れた日には紀淡きたんの海も望まれよう、風に鳴る静かな古松こしょうはんの木にかこまれている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また道には大穴をほって、さりげなく見せておき、そんな陥し穴を、いたるところにこしらえておくなど、とにかく、河内平かわちだいらの散所民がこぞッてやったことである。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金剛の長い山裾は石川から河内平かわちだいらへかけてまで、模糊もこと、すべて天地いちめんが春の陽炎かげろうと化している。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇治橋をこえ、やがて木津川づつみにかかる。河内平かわちだいらの空は雲雀ひばりかすんで、絵の中を行く気がする。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河内平かわちだいらのあちこちの野で、野焼きをしている火がひろい闇の中に美しく見えたからである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、この辺は、水の静脈じょうみゃく動脈だった。大小無数の川が、河内平かわちだいらで落ち合っている。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)