殘骸ざんがい)” の例文
新字:残骸
月桂樹の並木道を下りて行くとき、私は七葉樹の殘骸ざんがいを見た。それは黒く引裂かれて突立つて、眞中まんなかから裂けた幹は物凄く口を開いてゐた。
要するにすたれて放擲られた都會の生活のかす殘骸ざんがい………雨と風とに腐蝕ふしよくしたくづと切ツぱしとが、なほしもさびしい小汚こぎたないかげとなツて散亂ちらばツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
搾れるだけ搾り取つた最後の殘骸ざんがいから、命がけの力で噛み取ることだけが許されてゐた。だから彼等は搾取するそのことだけに疲勞困憊こんぱいしてゐた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)