此寺こゝ)” の例文
ですが、閻魔樣あちらさままへでは、けたものですから。——じつ此寺こゝ墓地ぼちに、洲崎すさき女郎やつまつてるんです。へ、へ、へ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私の顔貌かおかたちんなに成ったものだから捨てゝ逃げるのだと思うから油断を致しませんで、此寺こゝに四五日居りまするうちに、因果のむくいは恐ろしいもので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此寺こゝの僧どもは寒気さむさに怯ぢて所化寮しよけれうに炉をや囲みてあるらん、影だに終に見するもの無し。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
連れて歸ることは金輪際こんりんざいならん。嫁にすることが出けなんだら、娘にして貰うて下され。またあんたの方から他へ片付けようと、このまゝ此寺こゝで婆にして了はうと、それはあんたの勝手ぢや。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
尼「まア/\三四日此寺こゝに泊っておいでなさい、又心の変るものだから、互に喧嘩をしないで、私はお経をあげに往ってくるから、少し待っておいでなさい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御仏に仕ふる此寺こゝのものゝ、灯燭とうしよくを続ぎまゐらせんとて来つるにやと打見るに、御堂の外は月の光り白〻として霜の置けるが如くに見ゆるが中を、寒さに堪へでやかしらには何やらん打被うちかつぎたれど
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
私を此寺こゝ押附おっつけ、お前はそんな事をいって逃げる心だろう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)