歔欷すゝりな)” の例文
どうしたけな?』と囁いてみたが返事がなくて一層歔欷すゝりなく。と、平常ふだんから此女のおとなしく優しかつたのが、俄かに可憐いじらしくなつて來て、丑之助は又
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
だよう、おとつゝあになぐられつから、おとつゝあ勘辨かんべんしてくろよう」と歔欷すゝりなくやうな假聲こわいろさらきこえた。惘然ばうぜんとしてすべてがどよめいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
時としてお信さんの歔欷すゝりなく声が洩れ聞えることもあつた。彼女の身の振り方でも相談して居るのか、「心配おな」とか、「あんじようしてやる」とかいふお雪伯母の声がそれに交つて聞えた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
歔欷すゝりなくやうな合唱が、人々の口から口につぶやかれた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
暫しは女の歔欷すゝりなく聲のみ聞えてゐたが、丑之助は、其漸く間斷々々とぎれ/\になるのを待つて
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)