権式けんしき)” の例文
旧字:權式
が、俺たちの為すところは、退しりぞいて見ると、如法にょほうこれ下女下男の所為しょいだ。あめしたに何と烏ともあらうものが、大分権式けんしきを落すわけだな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これで一城の守将かとおかしくなるほど、余りに権式けんしき張らなさ過ぎる。殊に、半兵衛に対しては、自分の愚も無学もまる裸にして見せた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真実な人で、女房をおれんと云って三十八に成ります、家主いえぬし内儀かみさんは随分権式けんしきぶったものでございますが至って気さくなお喋りのお内儀さんで
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と奥様は、表では主人としての権式けんしきを保っていましたけれども、内々では、杖とも柱とも頼みきっておりました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一万石は一万石、十万石は十万石の権式けんしきで、茶壺が街道を往来するのです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
年はっても、こういうことには我慢のならないばばであった。ついこの年頃まで、郷里では、本位田家の隠居で通った権式けんしきぐせが、とたんにっと出るのである。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、高い気位と言葉にも権式けんしきを取って、ずっと、新免家の一間へ上がった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)