権守ごんのかみ)” の例文
「いずれそうよ、出処はたしかなものだ。川尻権守ごんのかみ溝中どぶのなか長左衛門ね、掃溜はきだめ衛門之介などからおさがり遊ばしたろう。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武芝は旧家であつて、累代の恩威を積んでゐたから、当時中〻勢力のあつたものであらう、そこへあらた権守ごんのかみになつた興世王と新にすけになつた経基とが来た。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
その故はこの人平治の逆乱によりて都の内に住み兼ねて東国へ落ち下り相模国さがみのくにの住人海老名えびなの源八権守ごんのかみ季貞と都にて芳心したりし事ありける間この宿所を頼みてゐたりける。
そうして縁へ両手をつくと、端近はしぢかにいた高坂出羽権守ごんのかみの耳へ、何やらヒソヒソ囁いた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
押領使おうりょうしだの、権守ごんのかみだのなんだの、かんだのと、任命されて、任地へ下って行った役人共は、みんな、中央から呼びをかけても、口実を作って、都へ帰って来ねえのが、大部分だというじゃねえか。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は、中宮ちゅうぐう仕えの少弁しょうべんつぼねといい、伊賀の権守ごんのかみたちばな成忠なりただの娘だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)