椽大てんだい)” の例文
この公道を代表する「順天時報」の主筆牟多口氏むだぐちしは半三郎の失踪した翌日、その椽大てんだいの筆をふるってしもの社説をおおやけにした。——
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一体馬琴は史筆椽大てんだいを以て称されているが、やはり大まかな荒っぽい軍記物よりは情緒細やかな人情物に長じておる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ましてや逍遙子は古人にあらざるを以て、その一旦擲ちたる椽大てんだいの筆を、再びとり上ぐることを得べきをや。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
天に逆らい再挙を計ることを、詩仙ミルトンが椽大てんだいの筆をふるってえがいている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
椽大てんだいの筆をふるってるじゃないか、時どき雑誌で拝見するよ
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けれども大久保湖州の名は未だ彼等の椽大てんだいの筆に一度たりといへども上つたことはない。彼等は皆彼等の職に甚だ忠なる批評家である。或はいささか彼等の職に忠過ぎるうらみさへあるかも知れない。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)