棲所すみか)” の例文
さらば愛も、憎も、惱も、苦もよ、今暫くが間であらうほどに、私の胸が張り裂けるまでは、お前達の棲所すみかとして、私はこの心臓を提供する。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
彼らは、そこを「蓮中の宝芯マニ・バードメ」と呼んで登攀とうはんをあせるけれど、まだ誰一人として行き着いたものはない。そのうえ、古くは山海経せんがいきょうでいう一臂人いっぴじん棲所すみか
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
動物園で色々の野獣の形状だけは見る事が出来ても、その天然の棲所すみかでどんな挙動をしているかという事は分らぬ。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なに、大江山へ——いよいよ話が大時代おおじだいになった。でも、鬼のいない胆吹へひとつ乗込んでみよう、その棲所すみかのあとを調べてみるだけでも無用ではない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これでやうやく私は自分の棲所すみかにかへつたやうに、安易な心持で朝々の蚊帳をぬけ出る事が出來ます。けれども寂しい。
道:――ある妻の手紙―― (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
生物は、わずか数種の爬虫はちゅう類がいるだけで、まったく、水掻きをつけ藻をかぶって現われる、水棲人インコラ・パルストリス棲所すみかというに適わしいのである。すると、ここへ来て五日目の夜。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ましてやアフリカ大陸の自然の棲所すみかで撮った河馬の映画となれば猶更なおさらのことである。
教育映画について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
第二の神秘境は、エスキモー土人が狂気のようにそりを駆ってゆくという、グリーンランドの中央部にある邪霊シュアー棲所すみかである。そこは、極光オーロラにかがやく八千尺の氷河の峰々。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)