柘榴石ガーネット)” の例文
鎖の先に燃える柘榴石ガーネットは、蒔絵まきえ蘆雁ろがんを高く置いた手文庫の底から、怪しき光りを放って藤尾を招く。藤尾はすうと立った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
綿にくるんで燦然さんぜんたるダイヤ、青玉サファイヤ紅宝石ルビー蛋白石オパール黄玉トパーズ土耳古石ターコイズ柘榴石ガーネット緑玉エメラルド……宝石の山! 金も白金も眼眩めくらめかしく一杯に詰まっている。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
昔とちがって、いまは萎靡凋落いびちょうらくのどん底にあるが、それでも、肉紅玉髄カーネリアン柘榴石ガーネットなどに混ってたまたま出ることがある。それもなんだ、藩王マハラジァの経営だから採収法が古い。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
博士の傍には金時計が天からかかっている。時計の下には赤い柘榴石ガーネットが心臓のほのおとなって揺れている。そのわきに黒い眼の藤尾さんがほそい腕を出して手招てまねぎをしている。すべてが美くしいである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうそう。倫敦ロンドンで買った自慢の時計か。あれは多分来るだろう。小供の時から藤尾の玩具おもちゃになった時計だ。あれを持つとなかなか離さなかったもんだ。あのくさりに着いている柘榴石ガーネットが気に入ってね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)