某町なにがしまち)” の例文
その向こうには、某町なにがしまちから某町なにがしまちに通ずる県道の舟橋がかゝつてゐて、駄馬だばや荷車の通る処に、橋の板の鳴る音が静かな午前の空気に轟いて聞えた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
公使館のあたりを行くその怪獣は八田義延はったよしのぶという巡査なり。かれは明治二十七年十二月十日の午後零時をもって某町なにがしまちの交番を発し、一時間交替の巡回の途にけるなりき。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しばらく故郷を離れたが正作は家政の都合つごうでそういうわけにゆかず、周旋しゅうせんする人があってなにがし銀行に出ることになり給料四円か五円かで某町なにがしまちまで二里の道程みちのり朝夕ちょうせき往復することになった。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)