末摘花すえつむはな)” の例文
しかしきれいに掃除そうじをしようとするような心がけの人もない。ちりは積もってもあるべき物の数だけはそろった座敷に末摘花すえつむはなは暮らしていた。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
だから、暫らくの間、本当に美奈子さんの姉にして置いて下さいませ。『源氏物語』に、末摘花すえつむはなと云うのがございましょう。あれでございますの。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しかして今日は然らず。今日もしつぶさに『末摘花すえつむはな』のいふ処を解釈し得ば容易に文学博士の学位を得べし。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
払ッてもまた去りかねていながら、人の心を測りかねて、末摘花すえつむはなの色にも出さず、岩堰水いわせくみずの音にも立てず、独りクヨクヨ物をおもう、胸のうやもや、もだくだを
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
源氏物語末摘花すえつむはなの巻の終りの方に、「いといとほしとおぼして、寄りて御硯おんすゞりかめの水に陸奥紙みちのくがみをぬらしてのごひ給へば、平中がやうに色どり添へ給ふな、赤からんはあへなんとたはぶれ給ふ云々うんぬん
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
末摘花すえつむはな女王にょおうは無視しがたい身分を思って、形式的には非常に尊貴な夫人としてよく取り扱っているのである。
源氏物語:23 初音 (新字新仮名) / 紫式部(著)
寄筍恋下女恋きじゅんれんげじょれん等の題目についてるべし。猥䙝をして一味いひがたき哀愁の美たらしめしは為永ためなが一派の人情本なり。猥䙝を基礎として人生と社会を達観したるは川柳『末摘花すえつむはな』なり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
普通の兄弟きょうだいのようには話し合わない二人であるから、生活苦も末摘花すえつむはなは訴えることができないのである。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
東の院の人たちも裳着もぎの式のあることを聞いていたが、贈り物を差し出てすることを遠慮していた中で、末摘花すえつむはな夫人は、形式的に何でもしないではいられぬ昔風な性質から
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あの末摘花すえつむはなに幻滅を感じたことの忘れられない源氏は、そんなふうに逆境に育った麗人の娘
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こんなことも言いながら、源氏は末摘花すえつむはなの着料に柳の色の織物に、上品な唐草からくさの織られてあるのを選んで、それが艶な感じのする物であったから、人知れず微笑ほほえまれるのであった。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
常陸ひたちの宮の末摘花すえつむはなは、父君がおかくれになってから、だれも保護する人のない心細い境遇であったのを、思いがけず生じた源氏との関係から、それ以来物質的に補助されることになって
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
末摘花すえつむはなも大苦心をした結晶であったから、自作を紙に書いておいた。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)