未嘗いまだかつ)” の例文
しかしどの国のどの部落も、未嘗いまだかつて彼の足をとどめさせるには足らなかった。それらは皆名こそ変っていたが、そこに住んでいる民の心は、高天原の国と同じ事であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
現實げんじつことまつた貴方あなたにはわからんのです、貴方あなた未嘗いまだかつくるしんだこといのですから。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
開闢かいびやく以来此世界に現れた、人、物、事、に就いては、少くも文字に残されて居る限りは大方知つて居るつもりであるが、未嘗いまだかつて、『完全なる』といふ形容詞を真正面から冠せることの出来る奴には
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分たちは過去三年間、未嘗いまだかつてこの中学の先生から諸君を以てぐうせられた事は、一度もない。そこで毛利先生のこの「諸君」は、勢い自分たち一同に、思わず驚嘆の眼を見開かせた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)