有髪うはつ)” の例文
旧字:有髮
有髪うはつの僧はこう云って、庄三郎を凝視した。遅い月はまだ昇らず、「聖壇」は仄々ほのぼのと暗かった。微風が四辺あたりを吹いていた。月の出の前の微風である。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土地の習慣ならはしから『奥様』と尊敬あがめられて居る有髪うはつの尼は、昔者として多少教育もあり、都会みやこの生活も万更まんざら知らないでも無いらしい口の利き振であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
有髪うはつのころは、京鎌倉にも少ない美人と、人のよう申せしを、幼心おさなごころにも覚えておる。墨染すみぞめすがたは、その麗人をどう変えたやら、見るも一興か。ま、通してみい」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
演習えんしゅうに来た兵士の一人が、青山街道から望み見て、「あゝお寺が出来たな」と云った。居は気を移すで、寺の様な家に住めば、粕谷の墓守時には有髪うはつの僧の気もちがせぬでも無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
関寺小町のつきつけた筆と色紙しきしとに、手をのべて受取ると、いつのまにか受身が受けられるような立場となって、関寺小町の姿は消えたが、「花の色は」の大懐紙の前に、美しい有髪うはつの尼さんが一人
私もいつかは有髪うはつの僧となって
有髪の僧 (新字新仮名) / 今野大力(著)
有髪うはつの僧の物語りは庄三郎には驚異であった。「人間は産れながら罪人である」「大なる生命」「小なる生命」実にこれらの説明は、彼には全く初耳であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
有髪うはつあま独語ひとりごとのやうに唱へて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それは有髪うはつの僧であった。身に行衣を纏っている。手に数珠を持っている。しかし足は跣足はだしである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だから私は有髪うはつの僧じゃ。したがって私の説教は普通の坊さんとは少し違う」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)