有無ゆうむ)” の例文
されば小説家たらんとするものはまづおのれが天分の有無ゆうむのみならず、またその身の境遇をも併せかえりみねばならぬなり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大村には勝重のく前に、源頼朝みなもとのよりとも時代から続いている渋江公業こうぎょう後裔こうえいがある。それと下野から往った渋江氏との関係の有無ゆうむは、なお講窮すべきである。辰盛が抽斎五世の祖である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
貝塚より魚骨魚鱗の出づるかたはら是等遺物の存在そんざいするは實にコロボックル漁業ぎよげふの法を明示するものと云ふべきなり。釣り竿の有無ゆうむは考へかたけれど、あみおそらくあみなりしならんと思はる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
私は唯両国橋の有無ゆうむにかかわらずその上下かみしもに今なお渡場が残されてある如く隅田川その他の川筋にいつまでも昔のままの渡船のあらん事をこいねがうのである。
それに本多家、遠藤家、平岡家、鵜殿家の出役しゅつやくがあって、先ず三人の人体にんてい、衣類、持物、手創てきず有無ゆうむを取り調べた。創は誰も負っていない。次に永井、久保田両かち目附に当てた口書を取った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)