曠原こうげん)” の例文
やがて、氷の曠原こうげんを踏んで猟虎入江ホプローバヤいりえを過ぎ、コマンドル川の上流に達したとき、その河口に、ベーリングの終焉しゅうえん地があるのを知った。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
もし死ぬ時が来ればチベットの曠原こうげんで泥棒に殺されないでもここに豊かに暮して居っても死ぬにきまって居るから決して構わぬ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ところで、云う所の空知郡とは「曠原こうげんにて、開墾第一の土地柄に候へども、海岸にてはこれなく、運輸の不便は云はずもがな、漁猟つかまつるべき様もこれ無き」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
わなになっている縄のはしが野馬の首にかかると力を込めて地上に引き倒し、おのれの馬を棄ててそれに飛び乗り、茫茫ぼうぼうたる曠原こうげんの上を疾走して馬の野性を乗り減らした。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もしこれらの人かりせば今日の社会は依然たる太古の社会にして、今日の人民はただかのタタールの曠原こうげんに野獣をい、アラビアの砂漠に駱駝らくだを駆るの人民なるべし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
薄明はくめいが長く続いて、午後八時頃に、太陽がようやく霧の曠原こうげん彼方かなたに落ちた。水平線に近い空が、一面のあかね色に染まり、一点の雲もない青磁色の天空に、そのあかね色が美しくとけこんでいた。
アラスカ通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
最も近く大きな蛞蝓なめくじを匍わしたような鬼ヶ岳と、黒部の谷を横さまに駿馬の躍るが如き木挽こびき越中沢二山との間に、五色ヶ原の曠原こうげんが広く長き段階状に展開して、雪と緑とそして懐しさとが溢れている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それは、コンデロガを発って間もなく、曠原こうげんの灌木帯で野牛を狩った時のこと、砂煙をたてて、牝の指揮者のもとに整然と行動する、その一群へ散弾をぶちこんだ。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
水はこの平原の頂上を境として、一方はチベット曠原こうげんに落ち一方はインドの方へ落ちます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
曠原こうげん中の雪峰 この辺もまたヒマラヤ山脈の雪峰が曠原の間にどっかりと腰を掛けて居るがごとく、いわゆるこの辺の景色を称して雪山榻子とうしの国とでもいうのであろうと思われる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)