暴風雨しけ)” の例文
ところで今夜は暴風雨しけではあり、それにもう仕事を止める頃じゃ。で、今こっちへ近寄って来る幾個いくつかの籠はみなからじゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ひどい暴風雨しけでございますこと。旦那だんな様がいらッしゃいませんと、ねエ奥様、今夜こんばんなんざとても目が合いませんよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
暴風雨しけで魚がないと下女が言訳を云ったにかかわらず、われわれのぜんの上は明かであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暴風雨しけにでもなりますと、あつちでも、こつちでも、御用がえます。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「おつと、何があつたんだ、まるで大變が暴風雨しけを喰つたやうな顏だ」
処を沖へ出て一つ暴風雨しけと来るか、がちゃめちゃの真暗まっくらやみで、浪だか滝だか分らねえ、真水と塩水をちゃんぽんにがぶりと遣っちゃ、あみの塩からをぺろぺろとお茶の子で、鼻唄を唄うんだい
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちやうど五月の暴風雨しけあと、仙臺石ノ卷から、金華山へ小汽船で渡つたときである。荒海にもてあそばれ、船中、ゲロゲロの慘状だつたが、ぼくは、波洗ふ甲板の上に出で、身を帆柱にしばりつけた。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
ナニ……恐ろしい暴風雨しけだ?……。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
荒れに荒れ狂いに狂い、吹きつ降った暴風雨しけも、充分威力をふるったのでようやく心がやわらいだのか次第に勢いを弱めて来た。そこは夏の雨風である。見る間に静まった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しのつく雨に風さえ加わり山は大暴風雨しけになっていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)