昔堅気むかしかたぎ)” の例文
母は昔堅気むかしかたぎの教育を受けた婦人の常として、家名を揚げるのが子たるものの第一のつとめだというような考えを、何より先にいだいている。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
サアおいでだというお先布令さきぶれがあると、昔堅気むかしかたぎの百姓たちが一同に炬火たいまつをふりらして、我先われさきと二里も三里も出揃でぞろって、お待受まちうけをするのです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
これは年が少し違うのと、父が昔堅気むかしかたぎで、長男に最上の権力を塗りつけるようにして育て上げた結果である。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで世の中では——ことに昔の道徳観や昔堅気むかしかたぎの親の意見やまたは一般世間の信用などから云いますと、あの人は家業に精を出す、感心だと云ってめそやします。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人は思わず懐から両手を出してぺたりと唐紙からかみそばへ尻を片づけてしまった。これでは老人と同じく西向きであるから双方共挨拶のしようがない。昔堅気むかしかたぎの人は礼義はやかましいものだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの先生も随分昔堅気むかしかたぎだからな」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)