旅宿りょしゅく)” の例文
そして、旅宿りょしゅくに二人附添つきそつた、玉野たまの玉江たまえと云ふ女弟子も連れないで、一人でそっと、……日盛ひざかりうした身には苦にならず、町中まちなかを見つゝそぞろに来た。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれこれするうちにつじは次第に人が散って、日中の鐘が鳴ると、遠くから来た者はみな旅宿りょしゅくに入ってしまった。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
ロロー殿下の旅宿りょしゅくの問題で、長良川博士は、ドン助教授や三千夫少年に、一体どうするかと相談をした。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、その後平岡の旅宿りょしゅくへ尋ねて行って、座敷へも這入らないで一所に外へ出た時の、容子から言語動作を眼の前に浮べてみると、どうしても又最初の判断に戻らなければならなくなった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
程なく大原家の話し声みて二、三の人のドヤドヤと表へ出でたる様子、月の光りにすかし見れば大原が叔父と叔母とを送りて以前の旅宿りょしゅくへ行くらしし。お登和嬢は顔見られじと門の内に隠れぬ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
多分その大船にるであろうと人々のいうにまかせ、取急ぎ新潟へまいりまして、旅宿りょしゅくにて船の様子を尋ねてると、こう/\いう奴の勧めに従い、二人ににんの舟人を雇うて沖へ乗出したところが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
文「全くお町の成れの果ではないか知らん、旅宿りょしゅくで見た短冊たんざくといい、今また此の歌といい、うもお町らしい、お町であってくれゝばれ程嬉しかろう、神よ仏よ、早く此処こゝに居合す人に逢わせ給え」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)