斎場さいじょう)” の例文
旧字:齋場
その後私は谷中の斎場さいじょうで挙げられた先生の告別式に参列した以外、つひぞ一遍も生前にお訪ねしたことがなかつた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そしてむこう側にある斎場さいじょうのビザンチウム式の建物は、黙然と落日のなかによこたわっていた。
青山の斎場さいじょうへ行ったら、もやがまったく晴れて、葉のない桜のこずえにもう朝日がさしていた。下から見ると、その桜の枝が、ちょうど鉄網のようにこまかく空をかがっている。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私の立居たちいが自由になると、黒枠くろわくのついた摺物すりものが、時々私の机の上に載せられる。私は運命を苦笑する人のごとく、絹帽シルクハットなどをかぶって、葬式の供に立つ、くるまって斎場さいじょうけつける。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)