文盲もんもう)” の例文
「はて文盲もんもうの野人は度しがたい者だ。よしそれほど剛情を張るなら試してやる。あ、これ、裏坂の仁作、この儀助を一つこらしめてやれ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とても当り前じゃない。しかし頭の好い人だったよ。何も彼も曲りなりに分っていた。自分は無学文盲もんもうでも、我輩には勉強を勧めてくれた。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おれは、悟空の文盲もんもうなことを知っている。かつて天上で弼馬温ひつばおんなる馬方うまかたの役に任ぜられながら、弼馬温の字も知らなければ、役目の内容も知らないでいたほど、無学なことをよく知っている。
きくところによると無学文盲もんもうとは、落語家はなしかなどにいわせると馬鹿の代名詞だが、決してそうでないので、ただ、学をまなばず、字に暗しであるので、文盲とは、文字だけに盲目めくらであるというのだ。
お杉は文盲もんもうであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ははあ、文盲もんもうとみえるな。読んで聞かせる。その裏面うらを返してみい。——楮幣チヨヘイハ銅幣『乾坤通宝ケンコンツウホウ』ト同ジクアハセ用ヒ、一切ノ交易ニトドコホリアルナカレ——としてあるのだ。よくおぼえておけ。
文盲もんもうの領民が、なにか読めない文字があると、紙キレに書いて、門前の小松にいつけておき、翌朝を待つと、それにフリ仮名と解釈が付いていたという言い伝えのある“字降松かなふりまつ”はホホ笑ましい。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)