散逸さんいつ)” の例文
紛失はしていないまでも、散逸さんいつはしていたろう。そうでなければ虫と鼠との餌食に供せられていたに相違ない。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たいてい、こんな、机の引出しなんかへれっぱなしにして置くので、大掃除や転居の度毎に少しずつ散逸さんいつして、残っているのは、ごくわずかになってしまいました。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
スタインホイザアの稿本は散逸さんいつして、バアトンの手にはひつたものは僅かであつた。
南宋となってから世もしばらく小康がつづいた。天下の名画をあつめた徽宗の宣和御府せんなぎょふ儲蔵ちょぞうも、往年の乱で大部分は散逸さんいつしたが、臨安の新都には、中興館閣儲蔵の制がふたたび設けられた。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)