散乱ちらか)” の例文
旧字:散亂
三吉は一ぱい物の散乱ちらかしてある縁側のところへ行って、この阿爺おとっさんとも言いたい年配の人の前に立った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一枚だけ残して雨戸も閉め、散乱ちらかつた物を丁寧ていねいに片寄せて、寝具も布き、蚊帳かやも吊つた。不図静子は
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
縄っ切や菜っ葉の屑のごみ/\散乱ちらかった道の上に焚火している四五人の人夫のむれも
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
一同出て行った後、家に残った人達は散乱ちらかった物を片付けるやら、ざッと掃除をするやらした。その晩は平常いつもより洋燈ランプの数を多くけて、薄暗い玄関までも明るくした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
姉のおせつは外出した時で、妹のおえいはうきを手にしながら散乱ちらかつた部屋の内を掃いて居た。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
文ちやんが屋外そとからお友達でも連れて来ると、何時いつでも斯の通り部屋を散乱ちらかしてしまふ。お栄は仏壇のある袋戸棚の下あたりを掃いて居ると、そこへ叔父さんが二階から下りて来た。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこいらに散乱ちらかつたものは皆な押入の内へ。床の間に置並べた書籍ほんの中には、蓮太郎のものも有る。手捷てばしこく其を机の下へ押込んで見たが、また取出して、押入の内の暗い隅の方へ隠蔽かくすやうにした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)