敢為かんい)” の例文
旧字:敢爲
諏訪因幡守いなばのかみ忠頼の嫡子、頼正君は二十一歳、冒険敢為かんい気象きしょうを持った前途有望の公達きんだちであったが、皆紅の扇を持ち、今船首へさきに突っ立っている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かえって明白な判断にもとづいて起ると云う事実は、彼が犯すべからざる敢為かんいの気象を以て、彼の信ずる所を断行した時に、彼自身にも始めてわかったのである。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今のチベット法王は敢為かんいなお顔付であるけれども、あの眼相めつきはよくないからしてきっと戦争でも起して大いなる困難をこの国に来たすことがあるであろう
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
たとえ、その一部分にてもこれを教えて完全ならしめんとするときは、かえってその人の天資を傷い、活溌敢為かんいの気象を退縮せしめて、結局世に一愚人を増すのみ。
文明教育論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
生の徹底が死に転じ、死の敢為かんいが復活の生へ突破せしめられるにより渦動的となり、しかも不断に生死相即転換するに依って、渦動はどこまでも重積せられるのである。
メメント モリ (新字新仮名) / 田辺元(著)
武術は人に敢為かんいの気象を教えるが、抗争の念を助長させたくないものだ、との優しい心づくし。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれども天の与えた性質からいうと、彼は率直で、単純で、そしてどこかにおさゆべからざる勇猛心を持っていた。勇猛心というよりか、敢為かんいの気象といったほうがよかろう。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
チビ公の興奮こうふんした目はるりのごとくすみわたってひとみ敢為かんいの勇気に燃えた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
敢為かんいの気象をお出しなさいよ」
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)