敏捷すばし)” の例文
あたかも私の友人の家で純粋セッター種のが生れたので、或る時セッター種の深い長い艶々つやつやした天鵞絨ビロードよりも美くしい毛並けなみと、性質が怜悧りこう敏捷すばしこく
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そういう場合における米友は注文より以上に敏捷すばしっこいので、女を水物みずものにしてしまうようなことはなく、お玉がおっこちるが早いか直ぐに腕を取って引き上げてしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
渡せ! さあさあ、二品を渡せ! いやか、老耄おいぼれ、いやというなら斬るぞ! ……これ、俺様はな、強い男だ! その上途方もなく敏捷すばしっこい男だ! 皆さまも大変怖がってくださる。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さういふ時、向ふかられちがひに来る学生の群などに出逢ふと、娘は固くなりながら何かの身扮みづくろひをする。その敏捷すばしこい、ほとんど無意識にやつてゐるやうな動作をわたしは見逃しはしない。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「それは子分の彦の野郎が、何かの手がかりになるだろうというので、検視の来る前に死骸の手からそっと取って来たんだ。あいつはなかなか敏捷すばしっこい奴よ。どうだい、三河町。なにかのお役に立ちそうなもんじゃあねえか」
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)