はさ)” の例文
新字:
屈折した直線の赤筋をかいた小旗をふなばたはさんで、船頭らしい男と配達夫と二人ふたり、漁船やら田舟やらちょっとわからぬ古ぶねを漕いでいる。
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
厄年やくどしの男女が特に警戒する以外に、信州では鬼の目団子だんご、もしくは鬼の眼玉と称して、三つの団子を串に刺し、戸口にはさんでおく風もある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼の話に種々の感嘆詞をはさんだ。それはいつもうまくあてはまるとは言えなかったが、しかしその調子には心かれてるさまが現われていた。
萬葉中の平凡なる歌といへども之を他の歌集にはさめば自ら品格高くして光彩を發するを見る。しかも此集今に至りて千年、未だ曾て一人の之を崇尚する者あるを聞かず。
万葉集巻十六 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
一切私が口をはさまないという態度が、作家の客観性を保証することでないのは自明である。
僕はここに疑問をはさむものである。結局堺氏は、末座ながら氏が「中流階級の人道主義者」とある軽侮なしにではなく呼びかけたところの人々の中に繰り入れられることになるのではなかろうか。
片信 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
祖父は鉛筆の大きな字体で、各章を読んだり読み返したりした日付を、書き入れていた。黄ばんだ紙片がいっぱいはさんであって、それには老人の質朴しつぼくな感想がしるされていた。
この日花を神に捧げる風習はいかにも広く行われているが、必ずしもことごとく竿の頭に付けて立てはせぬ。現に孝経楼漫筆こうきょうろうまんぴつに依れば「江戸四月八日に卯花うのはなを門戸にはさむ云々」
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)