振顧ふりむ)” の例文
三人のうちで、一番たけの高いお山と云ふ女がひよい振顧ふりむくと、『可厭いやだよ。誰かと思つたらお大なんだよ。』と苦笑にがわらひしながらばつが惡いと言ふていで顏を見る。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼はこまかく切ったその紙片を、さいなりに筋をひいて紙のうえにならべていながら、振顧ふりむきもしないで応えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お島はその傍へいって、目に涙をためて哀願したが、おとらは振顧ふりむきもしなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
品物を借りてある女が、様子を見に来たとき、お島は振顧ふりむきもしないで言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)