挑撥ちょうはつ)” の例文
いかに内容が良くても、言い方、取扱い方、書き方が、読者を釣ってやろうとか、挑撥ちょうはつしてやろうとかすべて故意の趣があれば
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は云う、無数の小国に分たれ、それが大砥独立して互いに嫉視している国においては、ほんのつまらぬ挑撥ちょうはつからしばしば戦争が起ると想像されることは当然である。
例えば裸体画問題等について、警察官が言う「実感を挑撥ちょうはつする」等がそうである。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
今まで面白気おもしろげ行司ぎょうじ気取りで見物していた迷亭も鼻子の一言いちごんに好奇心を挑撥ちょうはつされたものと見えて、煙管きせるを置いて前へ乗り出す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それからよし道徳の分子が交っていても倫理的観念が何らの挑撥ちょうはつを受けない——否受け得べからざるていの文学もまた取りけて考えていただきたい。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あしたに法を聴き、ゆうべに道を聴き、梧前灯下ごぜんとうかに書巻を手にするのは皆この自証じしょう挑撥ちょうはつするの方便ほうべんに過ぎぬ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(文学と云うものが感情性のものであって、吾人の感情を挑撥ちょうはつ喚起するのがその根本義とすれば)
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
有しておらぬところが余の好奇心を挑撥ちょうはつする訳で、近頃ふとした事からこの問題に関してその起原発達の歴史やら最近の学説やらを一通り承知したいと云う希望を起して
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いや時々冗談じょうだんを言うと人がに受けるのでおおい滑稽的こっけいてき美感を挑撥ちょうはつするのは面白い。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)