持地もちじ)” の例文
「これは、余所よそのおやしき様の持地もちじでございまして、はい、いいえ、小児衆こどもしゅは木の実を拾いに入りますのでございますよ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見馴れぬ新建あらだてがあると、目を止めたのは、彼の道場で、一松斎の門に、後足で砂をかけてから、隠居いんきょに頼んで、持地もちじ内に建てて貰ったばかりの、新居なのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
駒込こまごめでも岩崎の持地もちじがまだ住宅地に切売されぬ前には、盛んに雉子が遊んでいた」という。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
家をぜひとも萱葺かやぶきにしておりたい人は、自分の持地もちじのなかに生やして置けばよいのだが、それをすることは大へんな地面のついえだから、やはり多くの仲間のユイによって
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
或日の午後におとらが迎いに来たとき、父親も丁度家に居合せて、ここから二三町先にある持地もちじで、三四人の若い者を指図さしずして、可也大きな赤松を一株ひともと、或得意先へ持運ぶべく根拵ねごしらえをしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
玉脇の持地もちじじゃありますが、この松原は、野開のびらきにいたしてござる。中には汐入しおいりの、ちょっと大きな池もあります。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかり、町の中にても、隣より高かりし、わが二階家の、今は平家に建直りて、煙草たばこ屋の店開かれたり。扇折おうぎおりの住みし家は空しくなり、角より押廻せる富家の持地もちじとなりて、黒き板塀建て廻されぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)