持仏じぶつ)” の例文
旧字:持佛
仏壇といっても、寧子はまだ良人の遠祖も近親の故人も知らなかったので、ただ一体の弥陀如来みだにょらい持仏じぶつをそこにまつっただけのものである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは俗人で仏信心のものが持仏じぶつの前で木魚を叩いているものとも解されぬことはないが、「今流行はやる」というような言葉から推すと
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ほかの従者は寺へ帰して惟光これみつだけを供につれて、その山荘をのぞくとこの垣根のすぐ前になっている西向きの座敷に持仏じぶつを置いてお勤めをする尼がいた。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その左側には、お持仏じぶつ様の真鍮しんちゅうの燭台が立って百匁蝋燭めろうそくが一本ともれておりまして、右手には学校道具の絵の具や、筆みたようなものが並んでいるように思いましたが、細かい事はよく記憶おぼえませぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
持仏じぶつに向いまして
番の者へは、持仏じぶつやらかざしを与えて、やっと得心させて来たのです。あの小宰相だけは、日頃からさも誇らしゅう、この廉子や権大ノ局の小屋の前を
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仮の持仏じぶつにむかふ念仏 碩
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
正成の所持の品、持仏じぶつ経巻きょうかんなども、一つの坑へ入れた。さらには、一トすじの菊水の旗もそえておく。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「が、副将軍に深くとりいっているなかなかな奴。そのうえ、その妙吉に箔をつけて、持仏じぶつのごとく高家讒訴こうけざんその脇役をつとめている御一族が二家もある。あなどれません」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)