おや)” の例文
と、今度はガルールが、相手の容子ようすをじろじろと見かえした。その男も陽にけて筋骨逞ましく、手の甲のおや指のところに碇の入墨がしてある。
稚市の両手は、ちょうど孫の手といった形で、左右ともに、二つ目の関節から上が欠け落ちていて、おや指などは、むしろ肉瘤といったほうが適わしいくらいである。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼の手は、あわててもみ消したが、龍の丸の紫金襴しきんらんに、おや指の頭ぐらいな焦げの穴がもうあいていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
揉みはじめたのだがその足裏は、どうしたことかひどく硬くてへこまない。どうやら大きな胼胝たこらしい。博士は、今度はもう少し足を持ちあげて、そのおや指の尖端さきを灯の前へじ向けるようにした。
三狂人 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
大きさは、おや指の頭ほど。
純情狸 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
彼の左手は、逢痴の右手と同じに、やはり二つの指の高さが同じなので、もしおや指と小指の判別が、真実まことつかない場合には、決して決して、犯人が逢痴であるとは云えなくなるのだ。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)