抛物線ほうぶつせん)” の例文
それとほとんど間髪を入れず、馬場屋敷の屋根棟から「うん」という気合の声がした。と、暗中に抛物線ほうぶつせんを描き、一筋の捕り縄が投げられた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その上、短距離の射撃には、弾道は思うようにまっすぐにならず、抛物線ほうぶつせんは大きくなり、弾は充分まっすぐに飛ばなくて中間の物を打つことができなくなる。
誰も拾いてのない川の中に、彼らのいるところよりは可成かなり低い水面に、抛物線ほうぶつせんを描いてずぶりと墜ちた。流れの下にすッともぐったような落ちかたであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
又落下の途中一枚岩にせかれて、抛物線ほうぶつせん状にはね上っている珍しい瀑もある。所謂ヒョングリの瀑である。
秩父の渓谷美 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この問題が投げる抛物線ほうぶつせんは広くかつ深い。美に結合し、生活に参与し、経済に関連し、思想に当面する。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
もっとも二百十日や八朔はっさくの前後にわたる季節に、南洋方面から来る颱風がいったん北西に向って後に抛物線ほうぶつせん形の線路を取って日本を通過する機会の比較的多いのは科学的の事実である。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ときどき思い出したようにその森の上へ小鳥たちが抛物線ほうぶつせんを描いて飛び上った。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
空を仰げば明日は天気、一点雲なき星月夜、と大きく抛物線ほうぶつせんを描き、青く光って飛ぶ物がある。人魂ひとだまではない流星だ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
月夜に楕円形の抛物線ほうぶつせんを描き、蛇のようなものが翻然と、小一郎へ飛びかかって来たからである。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)