抃舞べんぶ)” の例文
そして其水田の向うに多量の残雪を額にも谷間にも白く輝かした山を見るに到って、一層の驚きと共に抃舞べんぶして喜ばない者があるであろうか。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
甘い空想にちたその匂が津田という対象を得てついに実現された時、忽然こつぜんあざやかなほのおに変化した自己の感情の前に抃舞べんぶしたのは彼女であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
終夜抃舞べんぶ歡樂に耽り、その宗教上の祭禮に熱狂する程の感興があつたからである。
神秘的半獣主義 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
かくのごとく宇宙を観察しきたらば、人生五十年の歳月は、観天楽地の間に雀躍じゃくやく抃舞べんぶして送ることを得、貧苦も病患もともに相忘れて、いながら極楽界中の人となることを得るに相違ない。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
〈最も喇嘛ラマを重んず云々、遥かにこれを見ればすなわち冠をぬぎ叩著こうちょす、喇嘛手にてその頂を摩し、すなわち勝れてこれを抃舞べんぶす、女を生めば美麗なるを択びてこれを喇嘛に進むるに至る
青天白日の下に抱擁ほうよう握手あくしゅ抃舞べんぶする刹那せつなは来ぬであろうか。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
われ今浄土ワルハラに帰る、幻影の盾を要せず。百年の後南方に赤衣せきいの美人あるべし。その歌のこの盾のおもてに触るるとき、汝の児孫盾をいだいて抃舞べんぶするものあらんと。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)