扨々さてさて)” の例文
扨々さてさて、御不音ひさし。その後は、侘びられつつも、華雲殿このかた、拝面の機もめぐまれず、遺憾しごく。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皮を鑢の下に敷いてたがねで刻んで颯々さっさつと出来る様子だから、私は立留たちどまっこれを見て、心の中で扨々さてさて大都会なるかな、途方もない事が出来るもの哉、自分等は夢にも思わぬ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
感付かぬとは扨々さてさて笑止、が、そこがこっちの付目、人目あっては嬲殺しは出来ぬ、今は二人だ、二人ばかりだ、逃がそうとて拙者は逃げぬ、逃げようとておのれ逃がさぬ、薮を盾に人目を遮り
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
紙入かみいれにするとか莨入たばこいれにするとか云うようなソンナ珍らしい品物を、八畳も十畳も恐ろしい広い処に敷詰めてあって、その上を靴で歩くとは、扨々さてさて途方もない事だと実に驚いた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
過日も横浜から例の青札あおふだを以て上等に飛込み神奈川にあがった奴がある。私は箱根帰りに丁度ちょうどその列車に乗て居て、ソット奴の手ににぎってる中等切符を見て、扨々さてさていやしい人物だと思いました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)