打遣うつちや)” の例文
これもしらべて見ようと思ひながら、いまだにその儘打遣うつちやつてある。バイロンはサアダナペエラスをゲエテに、ケエンをスコツトに献じてゐる。
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「僕ア知るものか、為れた方なんだもの。蔭口を利いたとか利かぬとか云ふ、言訳するにも為様しやうの無い馬鹿々々しい問題だから、僕は打遣うつちやつて置く事に決めた。」
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
是は必竟世話を焼き過ぎるから、付け上つて、人をこまらせるのだらう。当分打遣うつちやつて置いて、向ふから頼み出させるにくはない。と決心して、夫からは縁談の事をついぞくちにしなくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たつた一つの小さい革包を人に詰めさせて出て、旅行先でけて見た時に、探す物が上の方にはいつてゐないと、おれは面倒だから、探す物を探し出さずに打遣うつちやつて置くやうになる、それ程なら
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかし、いくら手のつけやうがないと云つても、そのまま打遣うつちやつて置くわけには、なほ行かない。そこで、船中の連中は、暇さへあれば、虱狩をやつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)