手帖てちょう)” の例文
小さい箱の上に、しわくちゃになった札や銀貨を並べて、二人でそれを数えていた。男は小さい手帖てちょうに鉛筆をなめ、なめ何か書いていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
と、僕は最後まで聞き取れなかったが、数字をもってこれを駁撃ばくげきすると、先の男が手帖てちょうを出して何か計算する。その間にまた一方から
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
……彼はまず手帖てちょうを出して調べた、あしかけ五年まえに、彼は五人の相手から不当の侮辱をうけた。それを左に摘要すると
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「明治三十七年の入学ではなかったかしら。」と記者は、胸のポケットから小さい手帖てちょうを出しながら、せっかちに尋ねる。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、帆村は手帖てちょうの中に連記する。
断層顔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひととおり私の名前や住所や年齢を尋ねて、それをいちいち手帖てちょうに書きとってから、急ににやにや笑いだして
灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いつかの父の上京の前夜、父は子供たちを客間に集め、こんど帰る時には、どんなお土産がいいか、一人々々に笑いながら尋ね、それに対する子供たちの答をいちいち手帖てちょうに書きとめるのでした。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)