戸前とまへ)” の例文
かれつめたいかぜとほ土藏どざう戸前とまへしめつぽいいしうへこしけて、ふるくからいへにあつた江戸名所圖會えどめいしよづゑ江戸砂子えどすなごといふほん物珍ものめづらしさうにながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
秋の陽にクワツと照されて、庭の先に見えるのは二た戸前とまへの土藏で、さすがに今日は煙草の荷の出入りもないらしく、土藏は頑固に扉を閉したまゝ沈默して居ります。
やがておづしの前に近よつた。太い格子戸の戸が左右から引かれて、太鼓錠がとぼその真中に下つて居る。彼は手さぐりに戸前とまへの処を撫でて見た。冷たい鉄の錠がひやりと彼の指先にさはつた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)