懐妊かいにん)” の例文
旧字:懷妊
彼奴きゃつが、お悦は、自分の子を懐妊かいにんしているのだと、それには広言して書いてあるから、おまえに見せる為わざとそれと共に結いつけておいたのだ
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懐妊かいにんと事がきまったとき、御米はこの新らしい経験に対して、恐ろしい未来と、うれしい未来を一度に夢に見るような心持をいだいて日を過ごした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
考えますにくずの葉の如く、この雪女郎のお嫁が懐妊かいにんし、そのお腹をいためて生んだ子があったとしたなら、そうして子供が成長して、雪の降る季節になれば、雪の野山
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
奉「ムヽ、柳が懐妊かいにんと分った月を存じてるか」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
召されて、宮中に入り、帝の寵幸ちょうこうをたまわってから、やがて身は懐妊かいにんのよろこびを抱いていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹はこの前懐妊かいにんした時に流産したので、今度こそは癖にならないように大事を取らせるつもりだと、かねていい越したその夫は、妹の代りに自分で出て来るかも知れなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)