態度そぶり)” の例文
「それはそうでございますけれど、でも、父は一度も、そういうことを申したこともございませんし、態度そぶりに見せたこともございません」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
暫らくその儘の歩調であるいて行ったが、直ぐ男が引っ返して来ることを期待するかのように、それとなく足を緩めて、待ち合わせるような態度そぶりを示した。
消えた花婿 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかし彼時あのとき親類共の態度そぶり余程よッほど妙だった。「何だ、馬鹿! お先真暗で夢中に騒ぐ!」と、こうだ。
それと共に、母の小言などはとも思はぬ態度そぶりやら、赤黒い顔、強さうな肥つた体、巡査、鉄砲、雁の血、などが一緒になつて、何といふ事もなく叔父をおそれる様な心地になつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
対手あいて態度そぶりによって島田の女も小さな河豚ふぐのような眼をやったが、これも気もちの悪い物でも見たと云うようにして、すぐ眼をらして対手の視線を追いながらあざけるような笑いを見せあった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、安兵衛をはじめ姉のおこよにも堅くいい含めて、二階に得体の知れない浪人の怪我人がいることなどは、口外はもちろん態度そぶりにも見せないようにさせていた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)