恩沢おんたく)” の例文
旧字:恩澤
このような亜成層圏飛行でも、やはり右にのべた恩沢おんたくはある程度あるらしい。そこでは、いつも西風が吹いているという。
成層圏飛行と私のメモ (新字新仮名) / 海野十三(著)
「みな父の遺徳、祖先の恩沢おんたくだ。……わしはまだわしとして、真に、領民から土下座をうけるほどな何事もしていない」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから佐助のためよりも春琴のために計らったことなのであるが結果から見れば佐助の方がはるかに多く恩沢おんたくに浴した。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
真人の出現——神の恩沢おんたくは汝の想像以上である。今や世界の随所に真理の中心が創設せられ、求むる者に慰安を与え、探る者に手懸りを与えつつある。
何百と云う人間を同じ箱へ詰めてごうと通る。なさ容赦ようしゃはない。詰め込まれた人間は皆同程度の速力で、同一の停車場へとまってそうして、同様に蒸滊じょうき恩沢おんたくに浴さねばならぬ。人は汽車へ乗ると云う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
えおののいていたかもしれないが、しかし、とにかく泰平の恩沢おんたくともいえることには、そこらの篝番の小屋にも、町なかの灯にも、総じて、酒の香がただよっていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)