怪物えてもの)” の例文
「何んとかして下さいよ、親分。あんな怪物えてものにのさばられちや、こちとらの耻ばかりでなく、神田つ子一とうの耻ぢやありませんか」
「怖ろしいのは大あらしぐらいのものですよ。猟師はときどきに怪物えてものにからかわれると言いますがね。」
木曽の旅人 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「斯ういう雄大な景色を見ていると清々する。この上親父の凸凹頭を撲ってやったら何んなに好い気持がするだろう。銭勘定の外何にも分らない怪物えてものは浅ましいね」
朝起の人達 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼処あすこは、鮒でも、鯰でも、たんといるだろうが、いけねえぜ、彼処には、怪物えてものがいるぜ」
おいてけ堀 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もつたいなくもこのタブー附の怪物えてもの——家康公のお墨附を安女郎やすぢよらうの戀文のやうに、ヒラヒラと宙に見せびらかすのでした。
鴨は又もや二足ばかり歩む、歩めば追い、追えば歩み、二三げんばかりも釣られて行く時、他の一人が此のていを見て、オイオイ止せよせ、例の怪物えてものに相違ねえよと、声をかける。
稲荷様へ行って、駕籠へ乗って中で着換えたのは、わざわざ遠方から来た、怪物えてものに見せようという細工さ。あの女はあれでなかなか馬鹿じゃないんだよ
私共の仲間では此れを一口に『怪物えてもの』と云いまして、猿の所為しわざとも云い、木霊こだまとも云い、魔とも云い、その正体は何だか解りませんが、兎にかく怪しい魔物が住んでいるに相違ありません。
「河童なら尻小玉しりこだまを抜くのが商法でしょう。突っ殺すという怪物えてものにはないはずじゃありませんか、ね親分」
「大變ですよ、その怪物えてものは、この町内だけでも噂の立つたのが、ザツと十五、六人。名前を讀み上げませうか」
ところが大變なんで、叔母がツイ大きな音を立てると、怪物えてものはサツと部屋の中から飛出した相です。
「野郎だか怪物えてものだか見当が付かねえから弱っているのさ、とにかく行ってみよう」
怪物えてものは足ぐらい融通して来るよ、——その辺の畳が濡れているかも知れねえ」
「親分、怪物えてものは隣の天水桶てんすいおけを踏台にして、ひさしを渡って二階へ押し込んだんだね」
たしなみの良いなら、滅多なことで人樣に愛嬌を振りくものぢやねえ——雌犬めいぬだつて毛嫌ひつてものがあらア、——十人も二十人もの若い男を矢鱈やたら無性に引付けるのは、容易ならぬ怪物えてものと思はないか
たしなみの良いなら、滅多なことで人様に愛嬌を振りくものじゃねえ——雌犬だって毛嫌いってものがあらア、——十人も二十人もの若い男を矢鱈やたら無性に引付けるのは、容易ならぬ怪物えてものと思わないか
「親分の前だが、女日照ひでりの國には、いろんな怪物えてものがゐるんですね」
それが、例の怪物えてもの——、何しろ青銭や鐚銭を
それが、例の怪物えてもの——、何しろ青錢や鐚錢びたせん