心臓むね)” の例文
旧字:心臟
箱の内は何ぞ。莎縄くぐなわを解けば、なかんずく好める泡雪梨あわゆきの大なるとバナナのあざらけきとあふるるまでに満ちたり。武男の心臓むねの鼓動は急になりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
自分のはだに手を触れて、心臓むねをしつかとおさへた折から、芬々ぷんぷんとしてにおつたのは、たちばな音信おとずれか、あらず、仏壇のこう名残なごりか、あらず、ともすれば風につれて、随所
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
誰に心臓むねを射ぬかれたのか、ちゃんと分っているなどと言って冷かした。
時次郎はとっくけんし、「うむ、心臓むね小刀ナイフが。……」言懸けて照子をれば、まなじり釣って顔色あおく、唇はわななけり。召したる薄色の羽織の片袖血潵ちしぶきを浴びてくれないしずく滴る。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)