心付こころづき)” の例文
はい、それに実は何でござります、……大分年数もちました事ゆえ、一時ひととき半時では、誰方もお心付こころづき憂慮きづかいはござりませんが。……貴女には、何をおかくし申しましょう。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども時々は、つい年長者のおごる心から、親しみの強い彼を眼下がんか見下みくだして、浅薄と心付こころづきながら、その場限りの無意味にもったいをつけた訓戒などを与える折も無いではなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて男は名残惜し気に幾度いくたび躊躇ためらいつつも漸くに気を取直し地に落ちた手拭に再び顔をかくして立上ると、女も同じく落ちたるくし心付こころづきながら乱れた姿を恥らう色もなく少時しばし寄添い
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)